とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

ゆうちょ銀行の通帳に記載されている(振替)とは

 ゆうちょ銀行の通帳の現在高のところに「振替(○○)円」とあります。ゆうちょ銀行の総合口座を開設する際に、通常貯金及び通常貯蓄預金のご利用上限額を設定します。通常貯金額もしくは通常貯蓄預金額がその上限額を上回ると、上回った分が振替口座(振替貯金)に自動的に移動するそうです。

 

 振替口座(振替貯金)とは、銀行で言う「決済用の預金」のことです。そのため、利子が付きませんが、万が一のことがあったとしても預かり金全額が保護されることになります。

 

総合口座のご案内-ゆうちょ銀行

建物明渡に関する相談

 先日、久々に建物明渡に関する相談がありました。

 

 賃借人が家賃不払いである場合や、契約とは違う用途で使っている場合など賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されるようなことがある場合に、建物明渡請求の正当事由に当たりますし、使用貸借の場合でも「使用貸借契約の目的を達した」と判断できる場合は明渡しを要求することが可能であります。

 

 さて、賃料不払いや用途違反ではなく、例えば建物の建て替えや取り壊しによる建物明渡請求はどうでしょうか?

 

 平成4年7月31日までに成立した建物賃貸借契約については旧借家法の適用を受けます。この場合は「正当な事由がある」ことが前提になります。

 

 賃貸借期間の定めがあれば期間満了の6ヵ月から1年前に賃貸人が賃借人に対して更新拒絶の通知をすることになります。期間の定めがない場合には6ヵ月前に解約申し入れをする必要があります(借家法1条の2、2条、3条)

 

 そして、平成4年8月1日以降に成立した建物賃貸借契約に適用される借地借家法第28条では更新拒絶や解約申し入れをする場合における正当事由の存否の判断材料が明文化されてます。

 

・建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情

・建物の賃貸借に関する従前の経過

・建物の利用状況

・建物の現況

・建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出

 

 建物の老朽化の度合いや建物の必要性、権利金の有無、立ち退き料や移転先の紹介の有無などが正当事由があるか否かの判断材料になりそうです。

 

 まあ、当事者双方が納得の上であれば何ら問題はないのですが、なかなかそうもいかないのが実情だと思います。

裁判事務関係の書類

 訴状や答弁書債務整理和解契約書、民事執行法第82条2項申出など裁判事務や債務整理に関する書類ですが、作成した書類だけでなく提出した書類すべてのコピーをとって綴ってあります。あとで同じようなな案件を手掛けた時に参考にするだけでなく、依頼者などから問い合わせがあった時に資料を見ながら対応するためであります。

 

 ちなみに、農業会の清算人選任関係書類もファイリングしてあります。これは今後もあり得る案件ですしね。

 

 このように自分自身が取り扱った案件につき、ファイリングしておけば再び同じような案件を手掛けることになったとしても、記憶頼りの場合よりも手続をスムーズに進めることができると思います。ただ、守秘義務や個人情報保護の関係上、こういった資料が外部に漏れ出さないようにすべく厳重に保管する必要があると思います。

 

 まあ、PDF化してPCにデータとして保管するのもアリかもしれないですね。

農業会の清算人就任

 以前、同じ支部司法書士さんより、農業会の清算人になってほしいとの話があり、裁判所で清算人に選任してもらったことがあります。

 

 清算人に就任するまでの流れですが、清算人選任申立書と一緒に、ワシが記名押印した清算人の就任承諾書を提出します。

 

 原則として、清算人選任申立の時に清算人報酬を含めた予納金が必要になり予納金の金額が20万~30万円とのことだったので、報酬を全額放棄することにしました。そのため、就任承諾書の他に清算人報酬放棄の上申書も一緒に提出することになります。そうすれば予納金はかからないそうです。

 

 清算人としての住所は自宅の住所にしましたが、選任申立書に事務所の住所も併記してもらいました。その結果、清算人選任決定通知書は事務所に届きました。

 

 その後は、農業会が承継した産業組合名義の根抵当権を抹消するために、登記関係書類に記名押印するなどし抹消登記が完了しました。

 

 根抵当権抹消登記完了後に、清算事務完了報告書を裁判所に提出すれば任務完了です。清算事務完了報告書は清算人が作成することになります。ワシは下記のような報告書にしました。

 

有限責任A信用購買販売利用組合を承継したA市農業会の根抵当権設定登記の抹消登記手続は添付資料の通り平成25年9月1日に完了しました。よって、A市農業会の清算任務が完了しましたので報告いたします。」

 

 報告書の添付資料として「根抵当権抹消登記完了証」と「登記事項証明書」を一緒に提出すれば清算人としての任務は終了です。

債務整理における消滅時効の援用

 債務整理の相談を受けた際に解決方法として自己破産、民事再生、任意整理、過払い金返還が真っ先に浮かびますが、他にも消滅時効の援用も選択肢の1つになってきます。

 

 一般の債権の消滅時効期間は、原則として10年です。しかし、その貸金債権が商事債権に当たる場合、消滅時効期間は5年になります。商事債権に該当する場合とは、債権者たる貸主が会社である場合です。

 

 そのため、サラ金信販会社のほとんどが会社なので、消滅時効期間は5年になります。ただ、民法第174条の2によると、判決を取られた場合(支払督促も含む)には、通常5年で完成する時効期間が10年に伸びてしまいます。

 

 なお、貸主が個人の場合や、会社ではない信用金庫、住宅金融支援機構福祉医療機構などの場合や、信用保証協会の求償権については消滅時効期間が原則として10年になります。

 

 ただし、借主が個人事業者などの商人で、事業資金などの営業のための借入である場合は商事債権となります。よって消滅時効期間は5年となります。

担保権の抹消手続の特例に関する通達について

 担保権の抹消手続の特例に関する「昭和63年7月1日民三3456号通達」が適用される要件は以下の通りです。

 

1.先取特権、質権又は抵当権に関する登記の抹消を申請する場合であること

 

2.登記義務者の行方が知れないため共同申請によることができないこと

 

3.債権の弁済期から20年を経過したこと

 

4.申請書に債権の弁済期から20年を経過した後に債権、利息及び債務の不履行によって生じた損害の全額(現存額ではなく最高額の意味)に相当する金銭を供託したことを証する書面を添付すること

 

 その中で法人が登記義務者になる場合において、法人の「行方不明」とは、当該法人について登記簿に記載がなく、かつ、閉鎖登記簿が廃棄済であるため、その存在を確認することができない場合になります。

 

 ゆえに、当該法人の閉鎖登記簿を取得することができる場合には「行方不明」には該当しません。この場合には当該法人につき裁判所に清算人選任申立をした上で、抹消手続を進めることになります。

 

 また、3につき担保権が根抵当権又は根質権の場合の被担保債権の弁済期については以下の通りに扱います。

 

・被担保債権の弁済期は、元本の確定の日とみなすものとする。 

 

・元本確定の日は、元本の確定の登記があるときまたは登記簿上元本が確定したことが明らかであるとき(民法第398条の6第4項、第398条の2第1項第2号、第3号、第5号)は、その記載に従います。それ以外の場合には、当該担保権の設定の日から3年を経過した日(民法第398条の19)を元本の確定の日とみなすことになります。

分筆登記の前提としての所有権登記名義人住所変更登記

 時々、土地家屋調査士さんから依頼があるのが、分筆登記の前提になる所有権登記名義人住所変更登記です。

 

 そもそも、分筆登記をする場合において所有者の現住所と登記簿上の住所が合致している必要があるか否かが問題になります。この点については登記研究に下記の記載があります。

 

1.登記名義人表示変更登記の省略の可否(登研429号)

〇要旨:土地分筆登記申請の際、土地所有者の表示(住所)変更登記を省略することはできない。

 

Q:土地の分筆の登記申請書に、申請人の変更後の住所を記載したため、登記簿の所有者の表示と一致しない場合において、住所変更を証する書面を添付しているときは、登記名義人の表示変更登記を便宜省略し、当該分筆登記申請は受理できないでしょうか。

 

A:受理できないものと考えます。

 

2.住所の変更を証する書面を添付してなされた分筆登記の申請の受否(登研581号)

 

〇要旨:表題部に記載された所有者又は所有権の登記名義人の住所の変更を証する書面を添付して分筆の登記の申請があった場合「便宜」受理して差し支えない。

 

 上記1と2とで相矛盾する質疑応答になっておりますが、2が「便宜受理して差し支えない」とあるので、1の質疑応答のように所有権登記名義人住所変更登記をした後に分筆するのがオーソドックスなやり方なのかもしれません。

合筆登記の前提としての所有権登記名義人住所変更登記

 土地の合筆登記の前提として所有権登記名義人住所変更登記をすることがあります。こちらについては分筆の場合とは違い、合筆する土地の所有者の住所が現住所と異なる場合には所有権登記名義人住所変更登記が必要です。

 

1.合筆等の登記申請と登記名義人の表示変更登記申請の要否(登研364号)

〇要旨:不動産の合筆又は合併の登記申請をする場合に、当該登記名義人の表示が変更(住所移転)しているときは、前提として登記名義人の表示変更登記をすべきである。

 

2.登記名義人の住所の異なる2筆の土地の合併登記の可否(登研380号)

〇要旨:所有権の登記名義人は同一人であるが、その住所を異にする2筆の土地を合併することはできない。

 

 そもそも合筆登記をする場合には下記の要件にあてはまることが必要です。

 

1.それぞれの土地登記簿の表題部に記載されている所有者または、所有権の登記名義人が同一であること。また、共有である場合は持分も同一であること。

 

2.それぞれの土地の地目も同一であること。

 

3.それぞれの土地が隣接していること。

 

4.抵当権などの担保権が設定してある場合には合筆したい全ての土地について「同一の登記原因」「同一の原因日付」「同一の登記の目的」「同一の受付番号」であること。

 

 ちなみに、土地の地目変更登記の前提として所有権登記名義人住所変更登記は不要です(登研302号)

表題部所有者欄に住所の記載なき不動産の相続保存登記

 表題部所有者欄に被相続人の住所の記載がない建物につき、相続保存登記を申請したところ、登記官から下記の話がありました。

 

 表題部所有者欄に住所の記載がない場合には、建物の所在地番を被相続人の住所として扱うとのことです。

 

 そのため、ワシが申請した件については、被相続人の住所を証する戸籍附票や除住民票及び出生から死亡までの本籍地に建物の所在地番の記載がなかったので、不在住・不在籍証明書も添付してほしいとの指示がありました。今までこのような指示を受けたことがないので面食らいましたが、言われてみればそうかもしれませんね。

 

 なお、表題部所有者欄に被相続人の住所の記載がない土地の相続保存登記を申請する場合にはどうでしょうか。閉鎖登記簿と旧土地台帳にも住所の記載はありません。

 

 この場合は、相続人が固定資産税を払っていることが分かれば、当該相続人名義の所有権保存登記ができるそうです。ゆえに、当該相続人が固定資産税を払っていることを証する書面(固定資産評価証明書など)も添付することになります。

機械器具目録の記載事項

 工場抵当権設定の場合、工場抵当法第3条の機械器具目録も添付することになります。そこで、機械器具目録の記載事項について調べてみました。

 機械器具目録の記載事項は以下の通りです。

1.必須事項:種類、構造、箇数又は延長
2.その他物を特定するための有益事項
※ 製作者の氏名または名称、製造の年月、記号番号など

 ちなみに、某金融機関作成の機械器具目録のひな形を参考にしているので、機械器具を設置する不動産の表示も記載するようにしております。

 ある建物の屋根に太陽光発電ソーラーパネルを設置した後に、すでに建物の敷地及び建物に設定してある抵当権を工場抵当に変更する際に必要な権利証(登記識別情報)は何でしょうか?

 建物に太陽光発電ソーラーパネルが設置されているので、抵当権を工場抵当に変更する対象になるのは建物になります。ゆえに、この場合は建物の権利証(登記識別情報)が必要になります。