とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

農地における直接移転

 先日、農地の転売に関する相談を受けました。現在の所有者はAでこの農地をBが取得した上でCに売却し、AからCに直接、売買による所有権移転登記をしたいとのことでした。

 

☆事例

A(所有者)→B(第1の買主・業者)→C(第2の買主)

 

 この場合、第三者のためにする契約と買主の地位の譲渡のどちらかを選択することになります。まず、第三者のための契約について考えます。農地法の許可がないと売買契約の効力が生じないため、前提としてA→B及びB→Cへの所有権移転につき農地法の許可が必要になってくるのではないかという気がしました。

 

 調べてみると、農地の処分許可の申請人は「権利の設定または移転の当事者(農地法3条)」 「権利を取得しようとする者及びその者のために権利を設定しまたは移転しようとする者の双方(農地法5条)」とされています。そのため、上記の事例において移転の当事者はA及びCになるので、第三者のための契約という形で進めることができそうです。

 

 さて、買主の地位の譲渡の場合にはどうでしょう。もし、第1の買主たるBが宅建業者さんの場合には「他人物売買に当たらない」ようにすればBからCへの売買をすることができることになります。

 

 その方法として「買主の地位の譲渡」によるものが最高裁判例で認められています(最判:昭和46年6月11日判時652号120頁、最判昭和38年9月3日民集17巻8号885号)。

 

 この場合は、下記の特約付の契約を締結すればいいと思います。

 

1.A→B間の売買契約

・所有権移転時期をBからAへの代金支払時とする旨の特約

・BがAに代金を支払った後、Bの意思表示により売買物件の所有権がAに留保される旨の特約

 

2.B→C間の契約

・本契約は登記名義人Aとの売買契約におけるBの「買主としての地位」をCに譲渡するものである旨の特約

・本物件の所有権は登記名義人Aが売買代金全額を受領し、かつ買主の地位をBからCに譲渡することにつきAが承諾した時に、AからCに直接移転する旨の特約

 

 なお、第三者のためにする契約、買主の地位の譲渡のいずれもAからCに所有権移転することにかかる農地法の許可が下りることが前提となります。