とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

抵当権抹消のための公示催告

 ワシが司法書士になって2、3年くらいの時(平成17年頃)に、株式会社が担保権者だった抵当権を公示催告により除権判決(当時)を得て抹消したことがありました。抵当権者たる株式会社の本店は東京でしたが、依頼者が持っていた資料に寄ればワシの地元に支店があるのが判明しました。

 

 このケースは抵当権者たる株式会社の登記簿謄本を取得することができず、かつ、弁済供託するには金額が大きすぎたということがあったので、公示催告による抹消と相成りました。ちなみに、依頼者の手元に以下の書類がありました。

 

・別の不動産に設定してあった当該株式会社との根抵当権設定契約書兼解除証書

・今回の抵当権の被担保債権の金銭消費貸借契約書兼抵当権設定契約書

・今回の抵当権の被担保債権が全額弁済された旨が記載されている弁済証書

 

 この時の手順はだいたいこんな感じでしたね。

 

1.管轄簡易裁判所に公示催告申立書提出(本人申立)

2.裁判官及び裁判所書記官からの指示に従って調査

根抵当権設定契約書に記載されていた当時の支店長の所在調査

・弁済証書に記載されていた抵当権者の支店所在地が現在の町名と一致しなかったので当該住所地の調査

・住所地が分かった後、その近隣の方々からの聞き込み調査

3.申立人が裁判所に出廷し陳述(当時の制度による)

4.除権判決(現在の除権決定)

 

 まずは、抵当権者たる株式会社の支店長さんの所在を調べたところ、すでに亡くなっていたことが判明しました。そのため、ここからは有力な証言を得ることができなかったです。

 

 そこで、支店所在地近辺に住んでいる方を対象に聞き込み調査をすることにしました。ちょうどこの頃から振り込め詐欺が多くなってきたこともあり、電話での聞き込みだと電話を切られてしまうことが多かったです。そのため、住宅地図を片手に1軒1軒回って聞き込みをしたのを覚えてます。その結果、抵当権者たる株式会社の支店があった敷地を競落し住んでいる方や、当時のことを覚えている方からの証言を得ることができ、これが決定打になりました。

 

 そんなわけで、このケースのポイントは下記の通りに考えます。

 

・抵当権の被担保債権の弁済日が記載されていた証書があったこと

・抵当権者の支店があった土地を競落した方及び当時のことを覚えている方からの証言を得ることができたこと

 

 当時は公示催告による除権判決でしたが、現在の除権決定と共通する部分もあると思いますので、参考になりそうなところは参考にしてもらえれば幸いです。

 

 ちなみに、今回の土地は抵当権抹消登記後に分譲地として売却中です。この件は、仲介業者さんから依頼者を紹介していただいて進めた件ですが、仲介業者さんの当時の社長さんから「人が作った制度に基づくものだから人の力で解決できる」とのありがたいお言葉がありました。確かに言われてみればそうですよね。