株式譲渡制限規定がある株式会社につき取締役および監査役の任期を10年に伸長した後、任期満了していないにも関わらず役員の改選による役員変更登記をしてしまうというケースが出てくると思います。
誤ってしてしまった役員変更登記を抹消する場合は「登記事項不存在による抹消」登記をすることになります。この場合の登記すべき事項は下記の通りになります。
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」A
「原因年月日」登記事項不存在により抹消
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」B
「原因年月日」登記事項不存在により抹消
「役員に関する事項」
「資格」取締役
「氏名」C
「原因年月日」登記事項不存在により抹消
「役員に関する事項」
「資格」代表取締役
「住所」X県Y市Z町1番地
「氏名」A
「原因年月日」登記事項不存在により抹消
「役員に関する事項」
「資格」監査役
「氏名」D
「原因年月日」登記事項不存在により抹消
問題になるのは「錯誤の証する書面」になります。この場合には下記の書類を添付することになります。
・任期の規定を伸長した旨の定款変更決議をした際の株主総会議事録
・任期の規定を伸長する前の定款
・上申書
上申書には「任期満了していないにも関わらず誤って役員改選による役員変更登記をしてしまった」旨の記載をし、会社届出印を押印することになります。
また、誤って役員改選による役員変更登記をしてしまった場合には、過料のこともフォローしなければなりません。
役員の任期が登記事項ではない以上、法務局は「取締役の任期は、原則として、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と扱い、監査役については「監査役の任期は、原則として、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」と扱います。
取締役および監査役が選任されてから6年後に、任期満了改選による役員変更登記が出されると、法務局は「選任懈怠」と判断してしまいます。そのため、過料の対象になるということで登記官から裁判所に通知され、裁判所から「会社の代表者個人」宛に過料の通知が送られることになります。
過料に対する異議申立期間は「裁判の告知を受けた日(郵便が届いた日)の翌日から1週間以内」とされています。ゆえに、過料処分に対する異議申立の手続をすぐにしなければなりません。
ちなみに、異議申立書については、会社代表者個人が記名押印した上で、理由欄に「任期満了していないにも関わらず誤って役員改選による役員変更登記をしてしまった」旨の記載をします。そして、役員変更登記の抹消登記が完了した後、裁判所に抹消登記後の謄本を提出することになります。
今後、こういったケースは十分あります。株式会社の役員改選による役員変更登記の依頼があった場合には「任期規定がどうなっているか」につき確認する必要がありますね。