とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

数次相続登記の合意解除による抹消

 今日、数年前に相続登記を手がけた方から、一部の土地につき名義を変えたいとの相談がありました。その土地は市街化調整区域にあり登記簿上の地目は田でした。また、相続登記をした年度の評価額が数千円だったため現況も田もしくは畑で課税されている可能税が高いです。そこで、この件につき事実関係を時系列順に並べてみます。

 

1.被相続人Aが平成28年10月1日に亡くなった。相続人は配偶者B、長女C、長男Dである。

2.被相続人Aの相続人たる配偶者Bが平成29年10月1日に亡くなった。

3.当事務所に平成30年5月1日に、遺産分割協議により長女Cが全財産を取得することになったことによる相続登記に依頼があった。

4.平成30年5月20日に相続登記申請。

5.平成30年5月30日に相続登記完了。被相続人名義の土地全てがC名義になった。

6.令和2年2月1日、Cより相続した土地のうち1筆だけD名義にしたいとの相談があった。

 

 D名義にしたい土地1筆の評価額が数千円であることを加味して検討すると、農地法の許可を得てCD間で贈与による所有権移転登記をするのが方法の1つになります。ただ、市街化調整区域の農地のため農地法の許可を得るために手間と時間がかかります。

 

 そこで、当該土地についてのみ、既に成立している遺産分割協議を相続人全員の合意により解除したことを原因として相続登記を抹消します。そして、当該土地につき改めて遺産分割協議を行った結果、Dが相続することになれば、D名義とする相続登記をすることができます(最判:平成2年9月27日、民集44-6-995)

 

 さて、本件土地につきC名義でなされた相続登記を遺産分割協議の合意解除により抹消する場合の申請人はどうなるでしょうか?

 

1.登記権利者

亡A

亡A相続人亡B

亡A相続人兼亡A相続人Bの相続人D

亡A相続人Bの相続人C

 

2.登記義務者:C

 

 被相続人Aが亡くなった時点では配偶者Bは生きているため、今回の相続登記を抹消する場合の登記権利者及び登記義務者は上記の通りになると考えます。