再転相続とは、相続人が熟慮期間中に、相続の承認または放棄を行わないまま死亡してしまった場合に、その死亡した者の相続人が、前相続人の相続を承認または放棄する権利を承継することです。具体的には下記の状況ですね。
(例)祖父X(1月1日死亡)⇒父Y(2月1日死亡)⇒Z
Zから見て祖父Xが1月1日に死亡し、父Yが2月1日に死亡したとします。Zは祖父X、父Yの相続分を承継することができます。さて、Zは祖父Xの相続分もしくは父Yの相続分だけを相続放棄をすることができるのでしょうか。この場合、Zができることは下記の通りになります。
1.祖父X及び父Yの相続分を承継:可能
2.祖父Xの相続分を放棄し父Yの相続分を承継:可能
3.祖父Xの相続分を承継し父Yの相続分を放棄:不可能
4.祖父X及び父Yの相続分を放棄:可能。ただし父Yの相続分を放棄すれば足りる。
なお、再転相続の熟慮期間については「相続人が相続の承認または放棄をしないで死亡したときは、その者の相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から起算する。」とされています。よって、祖父Xの相続人たる父Yが、祖父Xの相続につき承認または放棄をしないで死亡した場合には、父Yの相続人Zが自己のために相続の開始があったことを知ったときから熟慮期間が起算することになります。
また「Zが父Yが承継した祖父Xの相続分につき相続放棄をする」ことを明記する必要があります。
それでは、兄弟姉妹の相続ではどうでしょうか。
(例)弟A(7月1日死亡)⇒妹B(8月1日死亡)⇒C
※ABCは兄弟姉妹である。ABには配偶者及び子どもはおらず、ABCの両親は既に亡くなっているものとする。
この場合、Aの相続人はBC、Bの相続人はCになります。
1.弟A及び妹Bの相続分を承継:可能
2.弟Aの相続分を放棄し妹Bの相続分を承継:可能
3.弟Aの相続分を承継し妹Bの相続分を放棄:Aの相続人として相続分を承継するのは可能。しかし、再転相続にかかる相続分については不可能
4.弟A及び妹Bの相続分を放棄:可能
熟慮期間はCがABそれぞれの相続が開始したことを知ったときから起算することになります。なお、被相続人たる弟Aの相続放棄の申述書には下記の事由を記載することになります。
・妹Bが承継した弟Aの相続分につき相続放棄をする旨
また、申述の理由として下記の事由を記載することになります。
・弟Aにつき相続が開始したことを知った時期及び相続放棄の申述をする理由
・妹Bが承継した弟Aの相続分につき、妹Bに相続が開始したことを知った時期及び相続放棄の申述をする理由
兄弟姉妹の相続の件については、本日。管轄裁判所に確認しました。ただ、レアなケースなので実際にやってみないと分からないことが多そうですね。