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民法第646条第2項による移転登記

 ここのところ、この「年月日民法第646条第2項による移転」を登記原因とする所有権移転登記がクローズアップされています。

 

 この登記は、受任者と委任者との委任契約に基づき、受任者が委任者のために不動産の所有権を取得した後、受任者の委任事務が終了した後に、当該不動産の所有権を受任者から委任者に所有権移転登記をする場合の登記原因です。

 

 具体的には、売買契約等にからみ、AとBが事前に委任契約を結び、受任者BがAの代わりに当事者となりCと売買契約を締結し、登記名義を受任者B名義とした上で、将来、当初の目的が達成した際には、委任事務が終了したものとして、登記名義をBから委任者A名義に戻すというものです。この場合の登記原因日付は以下の通りです。

 

1.当初委任契約の特約による委任事務終了日

2.委任者・受任者死亡など民法653条の委任の終了事由発生日

3.特約が無い場合は、登記申請日(登記研究第457号118頁)

 

 受任者たる登記名義人が死亡したことにより委任の終了事由が発生した場合、受任者の死亡日を登記原因日付として、受任者の相続関係書類及び委任状に受任者の相続人全員が署名&実印押印の上、印鑑証明書添付して、直接BからAに所有権移転登記をすることができます。言い方を変えると相続登記は不要ということになります。

 

 なお、真正な登記名義の回復との違いについては以下の通りです。真正な登記名義の回復とは、間違って親会社の名義で登記してしまったなど、誤って真実の所有者以外の者の名義で登記されてしまった場合で、前の所有者の協力や担保権者の承諾が得られず所有権抹消登記や所有権更正登記をすることができないときにする登記になります。

 

 また、「年月日委任終了」の登記原因により所有権移転登記をすることがあります。これは登記簿上共有名義となっているが、実際は権能なき社団たる「自治会などの地縁団体」名義の不動産であるという場合で「共有になっている登記名義人全員」から「自治会などの地縁団体」に実体が伴わない所有権の移転登記に用いる登記原因です。