とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

特例有限会社ならではのケース

 先日申請した特例有限会社の役員変更の件で、登記官より補正指示がありました。事例はこんな感じです。

 

〇有限会社X

・役員:代表取締役たる取締役A、取締役B、監査役

・取締役の人数は3名以内。2名以上いるときは取締役の互選により代表取締役を選任する。

・株主:A(2400株)、B(600株)

 

1.監査役Cは平成9年1月1日に死亡した。

2.取締役Bは令和元年8月1日に死亡した。

3.Bの株式はDが相続した。

4.令和元年12月1日に行われた臨時株主総会にて下記の決議がなされた。

監査役Cの後任者は選任せず、監査役を置く旨の定款の定めを廃止した。

・取締役Bの後任者としてDを選任しDが席上で就任を承諾した。

株主総会議事録の附属書類として定款も一緒になっている。

 

 さて、この場合、どんな登記をすることになるでしょうか?ワシは監査役Cの死亡による退任登記と取締役Bの死亡による退任登記、取締役Dの就任登記をすれば足りると考えてました。しかし、登記官から「Bの死亡により役員がAだけになるので、代表取締役Aの氏名抹消登記をした上で、取締役AとDの互選により改めて代表取締役を選任する必要がある」との補正指示がありました。

 

 ただ、登記研究第462号118ページには、このケースでは取締役死亡による退任登記及び後任取締役の就任登記だけで足りる旨の記載があります。よって、取締役Bの死亡による退任登記と取締役Dの就任登記だけで足りることになります。

 

 このケースでは、代表取締役の氏名抹消登記&就任登記を必要とする考え方(実質論)と代表取締役の氏名抹消&就任登記は不要とする考え方(形式論)の2つがあるそうです。

 

 実質論は、いったん代表権を有しない取締役がいなくなったら、その時点で氏名抹消が必要という考え方で、形式論は、代表権を有しない取締役が一時的に存在しなくなったとしても、結果的には代表権を持たない取締役が登記されるのであれば、氏名抹消の登記は必要ないという考え方です。(形式論:登記研究第462号118ページ参照)

 

 登記実務では後者の形式論で良いそうですが、登記官によって考え方が分かれる可能性があるので、取扱いを統一して欲しいですね。