とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

旧相続法と現行相続法をつなぐ民法附則第25条&26条

 滅多にない事例ですが、現行相続法の施行後に旧相続法時代に発生した相続の処理をするケースもあり得ます。この場合、民法附則第25条及び26条により相続関係がどうなるかにつき検討する必要があります。

 

1.民法附則第25条のポイント

〇第1項

現行相続法の施行後、応急措置法施行前(旧相続法時代)に開始した相続については、原則として第2項の場合を除いて旧相続法が適用される。

 

〇第2項

被相続人甲の家督相続人はAである。さて、甲の後に亡くなったAの相続については、旧相続法が適用されるか現行相続法が適用されるか?なお、現行相続法が施行された後に相続手続をするものとする。

 

f:id:kikuringworld:20190812134115j:plain

 

①現行相続法の施行後、応急措置法施行前(旧相続法時代)に開始した相続で、法定推定家督相続人及び指定家督相続人がいないため、家督相続人を選定しなければならないケースでは現行相続法が適用される。

 

家督相続人を選定する必要があるケース

・法定推定家督相続人がいない場合

・指定家督相続人がいない場合

・家族の中から選定された家督相続人(第一種選定家督相続人)がひとりでもいる場合

・上記までの者が全くいない場合で一定の直系尊属もいない場合

 

家督相続の開始原因が下記による場合は財産の相続に関しては相続が開始しなかったものとみなされる。この場合、新法による相続人は婚姻取消及び離婚、養子縁組を取消した入夫戸主に対して財産の一部の分配請求をすることができる。(附則第28条を準用)

 

家督相続の開始原因

・入夫婚姻の取消の場合

・入夫の離婚又は養子縁組の取消の場合

※入夫:いわゆる婿養子

 

 この事例では、甲を家督相続したAが死亡したことにより家督相続が発生しているものの、法定推定家督相続人及び指定家督相続人がおらず、家督相続人も選定されていません。そのため、民法附則第25条第2項により、新法(現行相続法)が適用されます。よって、この場合はAの配偶者たるC及びAの実母(直系尊属)である乙が相続人となります。

 

2.民法附則第26条のポイント

被相続人甲の実子ではないAに相続権があるかどうか?

 

f:id:kikuringworld:20190812134254j:plain

 

〇第1項

①応急措置法施行の際における戸主が婚姻又は養子縁組により他家から入った者(入夫戸主)である場合、その家で生まれた戸主の実子ではない子(家附の継子)にも、新法施行後に開始した当該戸主の相続に関し、当該戸主の嫡出子とともに相続権がある。

 

〇第2項

①応急措置法施行の際における戸主が婚姻又は養子縁組により他家から入った者(入夫戸主)である場合、当該戸主につき、応急措置法施行後現行相続法の施行前に相続が開始した場合、家附の継子は当該戸主の相続人に対して相続財産の一部の分配請求をすることができる。

 

〇第3項

①応急措置法施行の際における戸主が婚姻又は養子縁組により他家から入った者(入夫戸主)である場合、当該戸主が応急措置法施行後に婚姻の取消もしくは離婚または養子縁組の取消もしくは離縁によって氏を改めた場合には、民法附則第26条第1項及び第2項は適用されない。

 

②①の場合、配偶者又は養親は、応急措置法施行後に婚姻の取消もしくは離婚または養子縁組の取消もしくは離縁によって氏を改めた戸主に対して財産の一部の分配請求をすることができる。もし、配偶者又は養親がいない場合、新法による相続人も同様に当該戸主に対して財産の一部の分配請求をすることができる。(民法附則第28条)

 

 この事例では、Aは入夫婚姻してこの家に入った被相続人甲の実子ではないものの、この家で生まれているので被相続人甲とAとの関係は家附の継子にあたります。よって、民法附則第26条第1項によりAも相続人の1人になります。そのため、甲の相続人は妻の乙と実子であるBCD、そしてAになりますね。