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相続法改正後の遺言執行者の権限

 相続法改正により遺言執行者の権限が変わりました。改正後の条文は下記の通りです。

 

第1012条
1 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。3 民法644条(善管注意義務)、民法645条(報告義務)、民法646条(受取物の引渡義務)、民法647条(金銭消費の責任)まで及び民法650条(費用償還請求権)、遺言執行者について準用する。

 

 そして、その中で民法第1014条第2項で「特定財産承継遺言」があった場合は、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができると定められています。なお、特定財産承継遺言とは遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の1人または数人に承継させる旨の遺言のことであり、相続させる旨の遺言であります。

 

 このような内容の遺言における遺言執行者は、不動産の登記申請や、動産の引渡し、債権譲渡通知など、対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます。よって、相続による所有権移転登記も取得する相続人が申請人になるだけでなく、遺言執行者による申請も可能になります。

 

 ちなみに、改正後の民法1007条2項(遺言内容の通知)、1012条(遺言執行者の権限)の規定は、施行日(2019年7月1日)より前に相続が開始した事案であっても、施行日(2019年7月1日)以後に遺言執行者となる者について、適用されます(附則8条1項)。

 

 また、特定財産承継遺言に関する改正後民法1014条2項~4項の規定は、施行日(2019年7月1日)より前にされた特定の財産に関する遺言に係る遺言執行者による執行については適用されません(附則8条2項)。

 

 施行日(2019年7月1日)より前にされた遺言に係る遺言執行者の復任権については、施行日(2019年7月1日)以後に復任が問題になった場合でも、古いほうの民法で処理されます(附則8条3項)。

 

 遺言執行者にかかる相続法の改正については、遺言が施行日である2019年7月1日より前に作成されたか、施行日以降に作成されたかで、改正法が適用されるか否かを判断することになります。