とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

内容証明郵便の不在返戻

 先日、請負代金を支払ってもらえないという相談を受けたので、今月末までに請負代金を支払って欲しい旨の内容証明郵便を作成し相手方に送付しました。相手方は法人につき本店所在地と代表者個人の住所宛に送付しましたが、本店所在地宛のものについては受領したものの、代表者個人の住所宛のものについてが不在返戻されている状況です。この件については、相手方の本店所在地に届き受領されているので相手方への請求はできています。

 

 ただ、代表者個人の住所宛に送付したものは到達していないものとして扱われるのでしょうか。この件については最高裁判例があります。

 

最判平成10年6月11日(一部引用)

 遺留分減殺の意思表示が記載された内容証明郵便が留置期間の経過により差出人に還付された場合において、受取人が、不在配達通知書の記載その他の事情から、その内容が遺留分減殺の意思表示又は少なくともこれを含む遺産分割協議の申入れであることを十分に推知することができ、また、受取人に受領の意思があれば、郵便物の受取方法を指定することによって、さしたる労力、困難を伴うことなく右内容証明郵便を受領することができたなど判示の事情の下においては、右遺留分減殺の意思表示は、社会通念上、受取人の了知可能な状態に置かれ、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認められる。

 

 今回のケースではどうでしょうか。依頼者によると、相手方に請負代金請求の件で何度か連絡をしたとのことでした。そのため、相手方からすれば、依頼者から送付された内容証明郵便が請負代金請求の件だと推知することができ、また、受領の意思があれば受け取り方法を指定すればいいので、さしたる労力、困難を伴うことなくこの内容証明郵便を受領することができると言えます。

 よって、上記の最高裁判例の通り、遅くとも留置期間が満了した時点で受取人に到達したものと認めることができそうです。