とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

1人会社における利益相反行為に対する承認決議

 取締役会を設置していない株式会社や特例有限会社の中で、株主(出資者)および会社を代表する取締役が同一人で、かつ、1名しかいない会社があります。

 

 こういった会社において、会社名義の不動産を取締役個人に売却するのは利益相反行為に当たるため、株主総会での承認が必要になります。

 

 ただ、当該会社の株式と会社を代表する取締役が同一人であり、かつ、1名しかいない場合には株主総会自体が成立するかどうかが問題になります。この場合、当該株主は会社を代表する取締役でもあるため、利益相反行為の承認決議をする株主総会において特別利害関係人になります。

 

 株主総会の場合には取締役会の場合と違い「原則として特別利害関係人にも議決権を認め、結果著しく不当な決議となった場合は、他の株主等から取消の訴えを提起できる。」こととされています。ゆえに、1人会社で株主と会社を代表する取締役が同一人であっても利益相反行為につき株主総会決議をすることが可能ということになります。けれども、仮に、著しく不当な決議がされた場合に決議取消の訴えの対象になり得るということになります。

 

 ちなみに、昭和56年の商法改正前においては、株主総会でも特別利害関係がある株主については議決権を認められないという取扱いでした。それが、昭和56年商法改正により、株主総会においては特別利害関係人に議決権を認めるという現在の取扱いになったそうです。参考にして下さい。