とある司法書士の戯れ言

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不動産登記における住所の読み替え規定

 不動産登記規則第92条にいわゆる住所のみなし規定が定められております。例えば「O市大字X1番地」が行政区画の変更により「O市X町1番地」に住所が変わった場合がみなし規定の適用が問題になります。

 

 ただ、不動産登記法改正により、不動産登記規則92条自体が表示登記に関する項目に盛り込まれているため、司法書士が扱う権利登記に適用があるか否かにつきはっきりしない状況が続いてました。

 

 この住所の読み替え規定については、平成22年6月に刊行された登記研究第748号48項に下記の記載があります。旧ブログでこのことを取り上げたのが平成17年11月なので、それから約5年後に登記研究で見解が示されたことになります。

 

(以下引用)

☆不動産登記規則第92条(行政区画の変更等)

1 行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。

2 登記官は、前項の場合には、速やかに、表題部に記録した行政区画若しくは字又はこれらの名称を変更しなければならない。

 

☆登記研究第748号48項

 ところが、新法施行後における「みなし規定」である規則92条は、「第三章登記手続」の「第二節表示に関する登記」中の「第一款通則」に規定されていることから、権利に関する登記については適用されない規定振りとなっている。

 そのため、行政区画に変更があった場合であっても、権利に関する登記については当然に当該行政区画が変更されたものとはみなされないことになる。その結果、右の住所の移転後に行政区画の変更があり、その登記名義人の住所変更の登記を一件で申請するときは、住所移転に係る事項と共に行政区画の変更に係る事項も登記事項となると解される。(登記原因は「年月日住所移転、年月日行政区画変更」と併記することになる。)

 

 したがって、新法施行後の規則の規定によって、右の昭和48年回答が変更されたか否かについては、明らかにされていないものの、規則の規定振りからすれば、「みなし規定」は、権利に関する登記については当然に適用されないと解すべきであるから、住所の移転後に行政区画の変更があり、その登記名義人の住所変更の登記を一件で申請する場合に、添付情報として市区町村長が作成した行政区画の変更を鉦する情報が提供されていれば、当該変更登記の登録免許税については、登録免許税法第五条第五号の適用があり、非課税となるものと解さざるを得ない。

 なお、権利に関する登記について、行政区画の変更が当然に変更されたとはみなされないとしても、当該行政区画の変更は、公知の事実であることから、住所移転を伴わない行政区画の変更だけが行われた場合には、所有権の移転登記等の前提登記としての行政区画の変更による登記名義人の住所変更の登記を申請する必要がないことは、従来どおりである。

 ただし、行政区画の変更による登記名義人の住所変更の登記を申請しても差し支えないことは、いうまでもない。

 登記研究によると「O市大字X1番地」から「O市X町1番地」に行政区画の変更により住所が変わっただけの場合には、いわゆる「公知の事実」ということで所有権登記名義人住所変更が不要だということになります。