現在、根抵当権者がみなし解散している会社である根抵当権抹消登記請求訴訟の準備を進めているところであります。当事者は以下の通りです。
☆当事者
・不動産所有者:A(原告・根抵当権設定者Dから不動産を相続した。)
・根抵当権者:株式会社B(被告・みなし解散)
・根抵当権債務者:株式会社C(訴外・平成9年1月31日破産宣告、同時廃止)
このケースで訴状を起案する場合、2パターン考えられます。なお、Aは所有権に基づいて抹消登記手続請求をすることになります。
1.根抵当権抹消登記手続をせよ(登記原因は「年月日判決」)
2.根抵当権元本確定登記手続請求&根抵当権抹消登記請求(根抵当権元本確定登記と根抵当権抹消登記の2本立て)
1の場合は「Aが不動産の所有者として、所有権に基づいてB名義の根抵当権の抹消登記請求をする。」との展開になります。
2の場合は、請求の理由を以下の通りに展開しようと考えております。(元本確定につき登記原因は「平成9年1月31日確定」、抹消につき登記原因は「平成9年1月31日確定債務不存在」)
①Aは不動産を所有しておりB名義の根抵当権が設定されている。
②根抵当権債務者Cは平成9年1月31日に破産宣告され、同日付で根抵当権の元本は確定している。
③Bは、遅くともCが破産宣告され、同日付で同時破産廃止決定がされた時点でCに対して債務の支払い請求をすることができた。そのため、Aは物上保証人としてCがBに対して負担する債務につき消滅時効を援用する。
④ゆえに、③により本件根抵当権の被担保債権が消滅しているため、本件根抵当権は平成9年1月31日に附従性により消滅する。
⑤よって、Aは不動産の所有者として、所有権に基づいてB名義の根抵当権の元本確定登記請求及び根抵当権の抹消登記請求をする。
訴額ですが、根抵当権抹消登記請求訴訟分だけでも良いとのことですが、これは裁判官によって判断が異なる可能性があるので管轄裁判所に確認した方が良いと思います。
なお、数年前に根抵当権抹消登記請求訴訟を手がけた際には、根抵当権者たる会社につき清算人選任申立をしたところ弁護士さんが清算人に選任されました。
債務者が個人で亡くなってから6ヵ月以上経過していたため、債務者の相続による根抵当権変更登記請求&根抵当権抹消登記請求の2本立てになりました。
まず、債務者の相続人が相続放棄をしているか否かを確認して相続人を確定させた上で、相続放棄していなかった相続人に債務の有無を確認し、債務に関する話は聞いたことがないし請求を受けたことがない旨の証言を得ました。
また、物上保証人たる原告は、債務者の相続人が債権者たる根抵当権者に対して負担する被担保債務につき、消滅時効を援用しました。
そのため「年月日相続」を原因とする根抵当権変更登記請求訴訟と「年月日確定債務不存在」を原因とする根抵当権抹消登記請求訴訟の2本立てになりました。
この時の訴額は、根抵当権変更登記請求訴訟分と抹消登記請求訴訟分の合算額になりました。根抵当権変更登記請求訴訟分は20万円でしたが、これも裁判官によって判断が異なる可能性があるので、管轄裁判所に確認した方が良いと思います。