とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

時効取得訴訟と相続

 以前、相続人が20名以上いる相続登記後に売買による所有権移転登記をしたい旨の相談を受けたことがあります。その時は、買主さんを原告とし相続人全員を被告として時効取得訴訟を提起し、その勝訴判決をもって時効取得による所有権移転登記をする旨を回答しました。このケースにつき、登記研究に以下の質疑応答がありました。

 

1.占有の開始時(取得時効の起算点)よりも前に開始した原所有者の相続については、時効取得による所有権移転登記の前提として相続登記をする必要がある。なお、この相続登記は勝訴判決を代位原因証明情報として原告が代位申請することになる。また、この相続登記は、時効起算日前に発生している相続についてのみで足りる。(登記研究第455号89頁)

 

2.占有の開始時(取得時効の起算点)よりも後に開始した原所有者の相続については、相続登記をする必要はなく、相続人による登記を申請することができる。この場合の申請人の表示は「義務者 亡A 相続人B」である。(登記研究第401号161頁)

 

 このケースは、上記質疑応答の1に当てはまるものなので「相続による所有権移転登記」と「時効取得による所有権移転登記」を連件で申請することになります。時効取得の登記原因年月日は「占有の開始時(取得時効の起算点)」なので、時系列順に並べれば当然ですね。