とある司法書士の戯れ言

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担保付不動産の信託と借り換え

 担保付不動産を信託の目的にしたケースで、借り換えをする場合について考えたいと思います。受託者はA、受益者はAとAの妹Bで、委託者の地位はAとBが引き継いでます。Aの推定相続人は配偶者Cと子どもDで、Bの推定相続人は兄たるAになります。

 

・受託者兼受益者:A

・受益者:B

 

 信託契約書には「大規模修繕に備えて借り入れる」ことは受託者の権限である旨が明記されているので、こういった受託者の権限は信託目録に記載しておく必要があると考えます。ただ、借り換えの権限については定めがないため、信託契約の変更も検討する必要があります。

 

 今回のケースでは、受託者が信託の目的不動産を担保にアパートローンの借り換えをする際に、信託契約書に「信託変更の際には、あらかじめ債権者の同意を得る必要がある。」旨の文言があれば、信託契約を変更する際に債権者の同意を先に得ておけば良いと考えます。

 

 また、信託契約書の最後に「信託契約に定めのないことについては信託法、民法、その他の法令及び信義則に従い受託者と受益者の協議で決める。」という条項があります。そこで、この条項により借換をする否かにつき受託者と受益者の協議で決めることができるのでしょうか?

 

 こういった場合、協議は協議でも、信託法に従い信託の目的の範囲内の協議と認められることが必要だと思います。

 

 また、契約書の条項に「信託契約に定めのないことについては信託法、民法、その他の法令及び信義則に従い受託者と受益者の協議で決める。」とあります。そこで、借り換えの場合、信託契約に借り換えに関する受託者の権限の定めがないため、受託者と受益者の協議で決めることができるのでしょうか。

 

 この場合、信託財産責任負担債務の借り換えなので、信託の目的からは逸脱してないはずです。よって、ワシ自身はこの借り換え自体に問題はないと考えていました。

 

 法務局に照会を出していましたが、先日、回答がありました。結局のところ、受託者と受益者の協議による合意があれば大丈夫ということになりました。また、登記原因証明情報に、今回の借り換えに関して受託者と受益者とで合意があった旨の記載をして欲しいとの指示がありましたね。