とある司法書士の戯れ言

KIKURINGの司法書士ライフと日常

清算結了した会社名義の登記された不動産

 先日、昨年10月に清算結了した株式会社名義の不動産を、代表者個人に売買による所有権移転登記をしたいとの相談がありました。聞き取りをした結果、清算結了登記前に売買していたものの登記をし忘れてしまったとのことでした。

 

 この場合は、登記義務だけが残っていることになるので、清算結了登記を抹消せずに当時の清算人が登記手続をすることになります。

 

 さて、このケースでは登記義務者たる当該会社の印鑑証明書と利益相反取引の承認決議をしたことを証する臨時株主総会議事録に押印する印鑑と印鑑証明書が問題になります。この点については登記研究に出ていました。

 

☆登記研究第480号132頁

(要旨)株式会社の清算結了の登記前に売却によって所有権が移転した不動産を、清算結了の登記後、元清算人から、登記義務者たる清算会社を代表して清算結了の登記前の日付を登記原因日付として所有権移転の登記申請をすることができる。なお、申請書に添付すべき印鑑証明書は、市町村長の証明した元清算人個人の印鑑証明書で足りる。

 

(問)株式会社が清算結了登記後、元清算人からその登記前に売買によって所有権が移転している不動産について清算会社を代表して登記義務者として、清算結了前の日付による所有権移転登記を申請できると思いますがいかがでしょうか。また清算人は現存しておりますので、その者の個人の印鑑証明書を添付すればよろしいでしょうか。

(答)御意見のとおりと考えます。

※類似の先例

・昭28.3.16民甲383

・昭30.4.14民甲708

 

 なお、今回は利益相反取引になります。清算人設置会社であれば清算人会議事録を添付することになりますが、清算人会を設置していないので臨時株主総会議事録を添付することになります。なお、臨時株主総会における決議の日は、清算結了よりも前の日で、かつ、売却日以前である必要があります。

 

 そこで、臨時株主総会議事録に押印する印鑑ですが、清算人個人の実印を押印し個人の印鑑証明書をすれば大丈夫とのことです。ただ、登記官によって見解が異なるので前もって確認した方が良いと思います。