とある司法書士の戯れ言

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個人事業主の法人成りと利益相反

 現在、個人事業主の法人成りに伴う登記案件を手がけています。具体的にはこんな感じです。

 

現在:土地・建物ともにA名義。AはP銀行から事業資金を借り入れ、土地にAを債務者とするP銀行の抵当権が設定してある。今般、AはA自身を代表取締役とする株式会社Xを設立した。

1.A名義の建物につき株式会社Xに売買による所有権移転登記手続

2.P銀行と株式会社X、代表取締役Aとで、AがP銀行に対して負担する債務につき株式会社Xも連帯して負担する旨の重畳的債務引受契約を締結する。

3.上記1で株式会社X名義になった建物につきP銀行と株式会社Xとで抵当権追加設定契約を締結する。

 

 ここで問題になるのはAと株式会社Xとで利益相反関係になるか否かです。まず、上記1については利益相反関係になるので株式会社Xの承認決議が必要で議事録が添付書類になります。

 

 上記2については株式会社XもAと連帯してP銀行に対する債務を負担することになるので株式会社Xの承認決議が必要です。ただ、すでに抵当権が設定してある土地がA個人の名義なので、債務者をAから連帯債務者A及び株式会社Xとする抵当権変更登記申請には承認決議があったことを証する議事録は不要です。(登記研究第588号)

 

 そして、上記3については株式会社X名義の建物にAと株式会社Xが連帯して負担すするP銀行に対する連帯債務を担保するために、P銀行の抵当権を追加設定することになります。この場合、株式会社X名義の建物に代表取締役A個人と株式会社Xを連帯債務者とする抵当権を設定することになるため、株式会社XとAとで利益相反関係になります。よって、株式会社Xの承認決議が必要で議事録が添付書類になります。(先例:昭和29年7月5日第1395号)

 

 個人事業主の法人成りに伴う登記手続の場合、代表取締役個人と会社との関係が利益相反関係になることが多いので、承認決議があったことを証する議事録添付の要否につき注意が必要ですね。