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配偶者居住権設定登記の依頼

 先日、相続登記とセットで配偶者居住権設定登記の依頼がありました。税理士さんが作成した遺産分割協議書に記載されていたため、今後の相続税対策の一環かもしれません。具体的にはこんな感じでした。

 

☆具体例

被相続人:A

・相続人:配偶者B、長男C

・配偶者居住権の対象建物:AとBとで共有。Aの持分はCが相続した上で、Bのために配偶者居住権を設定する旨の遺産分割協議が成立している。

 

 建物が被相続人たる夫Aと配偶者Bの共有なので、配偶者居住権を設定することができます。この場合、登記権利者が配偶者居住権者たるBになります。さて、建物所有者が登記義務者になりますが、この場合はAの持分を相続したCとBが義務者になります。よって、Cは委任状に実印を押印の上、Aの持分を相続した際に発行された登記識別情報と印鑑証明書が必要になりますが、Bについても権利者兼義務者として委任状には実印を押印の上、建物の登記済権利証(登記識別情報)と印鑑証明書が必要になります。

 

 なお、配偶者が配偶者居住権を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。(民法第1028条第1項)

1.被相続人の配偶者が被相続人の建物に相続開始の時に居住していたこと

2.遺産分割または遺贈等によって配偶者居住権を取得すること

 

 ただし、被相続人が相続開始の時に、建物を「配偶者以外の者(例:被相続人の子)」と共有していた場合には、配偶者居住権の成立を認めると、被相続人の死亡により他の共有持分権者の利益が不当に害されることになることなどを考慮し、配偶者居住権が成立しません。(民法第1028条第1項但書)