とある司法書士の戯れ言

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退職慰労金として不動産を現物支給する場合・1

 先日、とある株式会社の役員だった方が亡くなり、死亡退職金として不動産をその方の配偶者に現物支給する場合の所有権移転登記について話題になりました。この場合、所有権移転登記の登記原因がどうなるでしょうか。

 

 退任する役員に対して退職慰労金として会社名義の不動産を支給する場合、退職慰労金の金額が会社内部で支給基準として明確に定められているかそうでないかで登記原因が変わるそうです。

 

 退職慰労金の金額が定められている場合には「年月日代物弁済」になります。会社内部で支給基準で定められた金額に見合うだけの不動産を金銭に代わって現物支給することになるためです。

 

 退職慰労金の金額が定められていない場合はどうでしょうか。この場合の登記原因は「年月日退職慰労金の給付」になるそうです。(登記研究第790号質疑応答)

 

 なお、この場合には株主総会での承認が必要です。(会社法第361条)また、退職した役員による受諾の意思表示も必要です。よって、所有権移転の効力は、株主総会決議後、当該役員による受諾の意思表示の時に生じることになります。また、利益相反取引になるかどうかについても注意する必要があります。

 

 さて、役員だった方が亡くなり、会社名義の不動産を死亡退職金としてその方の配偶者に現物支給する場合に話を戻します。

 

 先日の話によると、死亡退職金は就業規則などで定められた配偶者などの受取人に対して支払われるものなので、厳密に言うと退職慰労金には当たらないようです。

 

 この場合における所有権移転登記の登記原因ですが明確になっていません。ゆえに、登記官と打ち合わせをした上で登記原因を決めることになるようです。